黒いチューリップ

2025年07月01日

1 タイトル

『黒いチューリップ』(原題:La Tulipe noire)

 

2 書店名

京創元社(創元推理文庫)

 

3 発行年月日

1971年3月26日(初版)

 

4 著者の略歴

アレクサンドル・デュマ(大デュマ)

1802年~1870年。フランスを代表する小説家・劇作家。『三銃士』や『モンテ・クリスト伯』など、史実を背景に大胆なフィクションを織り交ぜた波瀾万丈な物語を数多く発表したロマン派の巨匠です。『椿姫』などを書いた同名の息子(小デュマ)と区別するため、一般的に大デュマと呼ばれます。

 

5 訳者 宗 左近(むねた さこん)

 

6 書評(および著者が言いたかったこと)

本作は、17世紀にオランダで実際に起きた「チューリップ・バブル」を背景にした歴史ロマン小説です。

物語の冒頭は、時の指導者であったド・ウィット兄弟が暴徒と化した民衆に惨殺されるという、非常に重く凄惨な歴史的事件から幕を開けます。しかし、そこから物語は一転し、権力には一切無関心で、ただ「幻の黒いチューリップ」を咲かせることだけに情熱を注ぐお人好しな青年・コルネリウスの物語へと移ります。彼は才能を妬む隣人の陰謀によって無実の罪で死刑囚として投獄されてしまいますが、牢獄で出会った看守の娘ローザと惹かれ合い、悪党の目を盗みながら二人で密かにチューリップの球根を育てていきます。

 

【著者が言いたかったことのまとめ】

デュマが本作を通して最も伝えたかったのは、**「人間の醜い嫉妬や暴力的な政治闘争よりも、純粋な情熱と真実の愛の方が強く、尊い」**という希望のメッセージです。 冒頭の血塗られた政治闘争や、隣人の陰湿な悪意といった「人間の暗部(残酷さ)」を最初に強烈に描くことで、それとは対極にある「純愛」や「大自然の美しさ」をより一層際立たせています。理不尽な絶望の淵に立たされても、小さな希望の種(球根)を守り抜き、愛情を育むことで人は困難に打ち勝つことができるという、力強い人間賛歌となっています。

 

ハラハラするサスペンスの中にも温かみがあり、非常に爽快な読後感が味わえる色褪せない傑作です。

 

筆者 請川隆一