『オセロー』 ウィリアム・シェイクスピア
2025年10月31日
1. タイトル
オセロー
2. 出版社(書店名)
新潮文庫(新潮社)
3. 発行年月日
1967年11月15日(新潮文庫版の初版)
4. 著者の略歴
ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare, 1564〜1616) イギリス・ルネサンス演劇を代表する劇作家、詩人。『ハムレット』『マクベス』『リア王』そして本作『オセロー』の「四大悲劇」をはじめ、喜劇、史劇など数多くの名作を残しました。人間の本質や普遍的な感情を鋭く描き、その後の世界文学や演劇に計り知れない影響を与え続けています。
5. 訳者
福田 恆存(ふくだ つねあり)
6. 書評:冒頭の不穏な幕開けと「言葉」の恐怖
本作の冒頭(第1幕第1場)は、主人公である高潔な将軍オセローの登場からではなく、夜のヴェニスの街角という暗がりから始まります。そこで描かれるのは、オセローを深く憎む旗手イアーゴと、彼に金を巻き上げられているロダリーゴの不穏な密談です。
このオープニングの極めて巧みな点は、読者(観客)に対し、最初から「イアーゴはオセローを破滅させるつもりである」という犯行予告が突きつけられていることです。イアーゴが暗闇の中で冷酷に放つ「私は、私ではない」という台詞は、この劇全体を覆う「見かけと真実は違う」というテーマを強烈に印象付けます。読者は、イアーゴの緻密な罠に全く気づかずに彼を「正直者」と信じ込むオセローたちの姿を、ハラハラしながら見守ることしかできないという、恐ろしい構成になっています。
(まとめ)
シェイクスピアが本作を通して伝えたかったのは、**「人間の愛や信頼がいかに脆く、嫉妬(疑心暗鬼)がいかに容易く理性を破壊するか」**という恐ろしさです。
著者は以下の要素を通じて、このメッセージを浮き彫りにしています。
「緑色の目をした怪物」の恐怖: イアーゴの巧みな「言葉」による暗示だけで、高潔で勇敢なオセローの心に疑念が芽生え、あっという間に理性を失い、愛する妻への殺意へと変わっていく過程が描かれています。嫉妬は一度心に棲みつくと、自らを食い尽くす怪物であることを示しています。
コンプレックスと心の隙: オセローは軍人として成功していましたが、ヴェニス社会においては異邦人(ムーア人)であり、若く美しい妻との間にある年齢差や文化の違いに、無意識の不安(コンプレックス)を抱えていました。著者は、どんなに偉大な人物であっても、そうした「心の隙」を突かれることで簡単に崩壊してしまう人間の弱さを暴き出しています。
筆者:請川隆一
