犬の愛に嘘はない

2026年02月08日

ジェフリー・M・マッソンの名著『犬の愛に嘘はない 犬たちの豊かな感情世界(原題:Dogs Never Lie About Love)』

 

1.書店名(出版社名)

河出書房新社 

 

2.発行年月日

単行本: 1999127

 

3.著者の略歴

ジェフリー・M・マッソン(Jeffrey Moussaieff Masson 1941年、アメリカ・シカゴ生まれ。ハーバード大学でサンスクリット学を修めたのち、トロントの大学で精神分析学を学び、精神分析医として活動。一時はジークムント・フロイト記念財団の学術主幹も務めました。その後、動物の感情や心理をテーマにした執筆活動に転じ、『ゾウがすすり泣くとき』や本作『犬の愛に嘘はない』などの世界的ベストセラーを生み出しました。動物への深い共感と知見を交えた作風で知られています。

 

4.訳者

古草 秀子(ふるくさ ひでこ) 翻訳家。青山学院大学文学部卒業。ロンドン大学アジア・アフリカ研究院などを経て、ロンドン大学経済学院大学院で国際政治学を専攻。数多くの海外ノンフィクションや心理学・動物関連の翻訳を手掛けています。

 

5.書評

**「犬は人間が想像する以上に高度で豊かな感情を持っており、中でも彼らの『愛』には一切の打算や嘘がない」**ということです。

執筆当時、「動物の行動はすべて本能や条件反射にすぎない」という冷たい見方が主流でした。しかし著者は、以下のような驚くべきエピソードを通して、犬には人間以上の「無償の愛」が確かに存在することを、わかりやすく説明しています。

 

·       距離と常識を越える愛(32キロの奇跡) 著者が事情により32キロ離れた友人の家に預けた愛犬が、数日後、これまで一度も行ったことのない大学にある著者の部屋へ自力でたどり着いたエピソードです。どうやって見知らぬ場所でピンポイントに部屋を見つけ出したのかは謎のままですが、著者はこれを「物理的な距離や常識をも越えてしまう、純粋で圧倒的な愛情の証」として紹介しています。

 

·       虐待をも許す「無条件の愛」 日常的に自分をいじめていた飼い主がボートから落ちて溺れかけた際、犬は一切の躊躇なく水に飛び込みました。そして自ら深く潜り、溺れる飼い主の足の下から懸命に水面へ押し上げようとしたのです。過去の恨みを持たず、自分を傷つけた人間にすら命懸けで100%の愛情を注ぐ姿から、犬の究極の誠実さが伝わります。

 

·       お留守番時の「永遠の別れ」と「再会の歓喜」 人間にとっての短い外出も、犬にとっては毎回が「見捨てられたかもしれない」という絶望に等しい出来事です。だからこそ、出かける前は優しく声をかけて不安に寄り添うべきであり、帰宅時に犬が爆発的に喜ぶのは、単なる条件反射ではなく**「見捨てられなかった!助かった!」という魂からの安堵**であると著者は説きます。

 

犬はただまっすぐにしっぽを振って、私たちのもとへ駆け寄ってきます。愛犬が全身で喜びを表現してすり寄ってくるその姿を見ると、私たちは理屈抜きに深い愛おしさを感じ、心が温かな安心感に包まれるのを感じるはずです。

 

筆者 請川隆一