『星の王子さま』
2026年01月11日
1. タイトル
『星の王子さま』(原題:Le Petit Prince)
2. 出版社(書店名)
岩波書店(岩波文庫)
3. 発行年月日
2006年3月28日初版発行は1943年)
4. 著者の略歴
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900〜1944) フランスの作家であり、飛行操縦士。民間航空の開拓期に郵便飛行士として活躍しながら、『夜間飛行』や『人間の土地』などの名作を執筆し、数々の文学賞を受賞しました。第二次世界大戦中の1944年、偵察飛行に飛び立ったまま地中海上で消息を絶ちました。
5. 訳者
内藤 濯(ないとう あろう)
6.【書評】
本作の冒頭は、主人公である「私(飛行士)」の幼少期の回想から始まります。6歳の「私」は、ジャングルで猛獣を丸のみにするウワバミ(大きなヘビ)の絵を描きます。それは「ゾウを消化しているウワバミの絵」でしたが、大人たちはそれを見て口を揃えて「ただの帽子だ」と言い放ちます。さらに大人たちは、「絵なんてやめて、地理や歴史、算数や文法に興味を持ちなさい」と忠告します。この出来事をきっかけに、「私」は画家になる夢を諦め、大人たちの価値観に合わせて生きる飛行士となりました。
この短い冒頭部分は、単なる前日譚ではありません。これから始まる星の王子さまとの出会い、そして物語全体を貫くテーマへの「強烈な問題提起」となっています。読者はページをめくってすぐに、「あなたは、子どもの頃の純粋な目を忘れてしまった『大人』になっていませんか?」と問いかけられるのです。
【まとめ】
冒頭のエピソードを通して、著者が伝えたかったメッセージは主に以下の2点に集約されます。
「目に見えるもの(表面)」しか見ようとしない大人社会への批判 大人たちは「ゾウをのみこんだウワバミ」という内側の本質を想像できず、外側のシルエットだけで「帽子」と決めつけます。著者は、数字や実用性、肩書きといった「目に見えるわかりやすいもの」ばかりを重んじ、想像力を失ってしまった大人たちの姿を皮肉を込めて描いています。
「本当に大切なもの」は想像力と心の中にあるという提示 のちに登場する有名なセリフ「大切なものは、目に見えない」の土台が、すでにこの冒頭で完成しています。物事の真理や本質を理解するには、子どものような柔軟な想像力と、心の目で見る力が必要不可欠なのだと著者は訴えかけています。
この冒頭文があるからこそ、サハラ砂漠で王子さまから「ヒツジの絵を描いて」と頼まれた時の感動が際立ちます。
筆者:請川隆一
